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鈴木奈緒インタビュー
 


写真にいたるまでは紆余曲折

 
 
藤田
経歴見てたら、私と同じ大学ですね。

鈴木
そうなんですね。私は油絵をやってました。
「内面の表現とは」みたいな感じで、抽象画を描いていました。
でもそういった自分の表現は、出て行ってもそのままどこにもぶつからず、別のかたちで自分に跳ね返ってくることもなく、ただくるっと戻って来て打たれちゃうような感じでした。
人に見せても、きれいだね、色がきれいだね、どうやって塗ったのとか、それくらいしか返ってこなかったんです。


藤田
ふむふむ、あるよね、そういうむなしさって。

鈴木
大学を卒業してから違うことをしたかったので、それで油絵は描かなくなりました。
インスタレーションやってみようって、ちょっとやったりとか、あとオブジェというか立体を作って発表していました。
絵具が垂れるのとか、釘とか針金が巻いてあるものとか、どろどろしたようなオブジェを作ってたんです。


藤田
それは何歳くらいのことですか?

鈴木
学部を卒業してから専攻科で一年残ってて、それを卒業して二年くらい経ってからのことですね。
釘がぶら下がっている小さい箱を作って、展示をしたことがあったんです。
こんなに大きい釘でも、鳴らすとチリンってすごいキレイな音が鳴るんですね。
私はそのイメージとギャップがあって面白いかな、と思って展示していたのです。
だけどちょっと変わったお客さんが、バーンて壊しちゃったんですよ、がしがし叩いて。


藤田
意味わかんない(笑)。

鈴木
で、「ちょっとちょっとなにやってるんですか」って言ったら、「僕にもよくわかりません」って。
さすがに作品を壊されたのは初めてで、ショックで、私は悪気がなく作っても、そういう反応をする人がいるんだなと思ったんです。
それまた何か考えなきゃいかん!と。
当時、作品の写真や会場写真を撮ったりとか、旅行に行ったり、友達としゃべって飲んだりしたのを撮ったりしていたんですね。
それをたまたま映像を作ってる人に見せたら、「作品なんかよりこっちのほうが面白いのに、なんでこれを展示しないんだ、よっぽどストレートにあなた自身が出てると私は思いますよ」って言われたんです。


藤田
それをまた展示したらどうでした?

鈴木
絵とかオブジェを作ってたときよりも、反応があったんです。


 
  このページの写真は全て(c)Nao Suzuki
難しいことは分かる人に任せよう

藤田
カメラはデジカメですか?

鈴木
ほとんどデジタルカメラには手をつけてなくて、一眼レフでもなくて。
色がきれいに出るしレンズが好きなので、フィルムのカメラで小さい、こんな昔のコンパクトカメラですね。


藤田
フィ、フィルムなんですか?

鈴木
そうです。
私はプリント屋さんに出すので、「ああ何時に出来上がるんだろう」「こんなふう撮れた」っていう楽しみがうれしいですね。
例えば友達がバンドをやっていて、ライブ写真をフラッシュたかないで、記録として撮っていたら、人が線、ライトが文字みたいになって。
こんな風に撮れるんだって知ってから、どんなに暗くてもフラッシュは使わないで撮ってますね。


藤田
鈴木さんの写真って、これまで私が見てきた写真というものとだいぶ違うんですけど。
デジタルっぽい見た目もあるし、この紙でいいの?という材質でもあるんですけど。

鈴木
デジタルっぽい、これもわざわざフィルムで撮ったのをデータにして、画像を重ねたりして。
写真をもともとやってないせいもあるのか、油絵なんてキャンバスじゃなくても描けるっていうのがあるんだか、あまり紙質とか、もとの色と違うとかいうのにまったくこだわりがないんです。


藤田
ここは富士ゼロックスで、鈴木さんが作品を作るのに、撮影した写真をコピー機を使って普通にコピーしたり拡大したり、っていう作業をするのも驚きだけど、何か色や質感が変わってきたりするのでは?
コピー機で作られたこういう本も、いろいろな大きさや紙を使ってますよね。

鈴木
コピー機っていろんな紙が使えるんですね。
これは大型機で作りました。
大型機って、油がじゅーってしみつくんです。
これ裏で、裏がこんなにアブラっぽくなって。
たぶん光沢のある紙だと真っ暗で、それはそれでしぶいんだと思うんですけど、しらっちゃけてて面白いなあって作ったりとか。


藤田
すごぉい!
さすがここでバイトしてるだけありますね(笑)。

鈴木
コピー機によって表情が変わるので、ねっとり油っぽいのもあるし。
もとの原稿にもよるので、これなんて携帯のカメラで撮った写真ですよ。


藤田
普通の写メ?見えない!!

鈴木
これをブロック状にインクの加減が、3つ写真が重なっていて、写メ・写メ・普通の写真なんです。
重なっているのを見れば、結構繊細なところもあれば、ぼこぼこになっているところもあるんです。

藤田
なさってたせいか、なんとなく抽象絵画ぽくもありますよね。

鈴木
もともと原色が好きで、花とか植物、風景を重ねたりしてます。
ビデオアートをやってるお友達に影響を受けて、ビデオカメラを買ってやってみたこともあります。
デジタルな色みとか、人工的なものとか、そういう影響かもしれません。
欲張りなのでいろんなことがやりたいと思ってるんです。
でも先ほど言ったように、傾向が人はこういったかんじ、風景はこういったかんじ、だんだん分かってきたような。


藤田
絵画とかの昔の作品を見て、今の写真作品を見て、何かつながってたりしますか?

鈴木
見る人が見たら、一貫しているようには見えるとは言われたことがあります。
でも近くにあって一番なにに手が伸びるかというと、やっぱりカメラです。
3月4日〜21日に行われる個展では、これまでの作品もたくさん見せていく予定です。
ぜひ、見に来てください。


藤田
私の誕生日までですね、ぜひぜひ!
このアート・バイ・ゼロックスを知らない人も多いですから、来て、富士ゼロックスのメセナ活動も知って欲しいですね。
今日はどうもありがとうございました!

 
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