まずは旧市街に点在する作品から。
ハンス=ペーター・フェルドマン(写真3,4,5)は、薄暗くて不衛生というイメージが定着している公衆トイレを、「美しく快適な」場所に改装した。中には、百合の写真やおもちゃのカラフルなシャンデリアが取り付けられ、BGMも流れる。
シルケ・ワーグナー(写真6,7)は、ミュンスターでスクワットや反核デモの主導者として活躍したポール・ヴルフの広告塔を繁華街に設置する。広告塔には、彼の生涯やミュンスターでの反核運動に関する歴史的資料が貼付されている。このプロジェクトは、地元の環境センターと恊働で行われ、インターネットで閲覧可能なデジタルアーカイブも今回を機に作成された(http://www.uwz-archiv.de/)。
ドミニク・ゴンザレス=フォースター(写真8,9,10,11)は、「ミュンスターの小説」と題し、過去三回の彫刻プロジェクトで設置された作品(現存していないものも含む)のミニチュアを作り、芝生に並べた。無邪気な子供たちが、それらを遊具として使っている活用している光景も見られる。
マイク・ケリー(写真12,13,14)は、子やぎ、子ろば、子牛などが戯れる小さな動物園を作る。憩いの場かと思いきや、小屋の中にはロトの妻像(※ロトは創世記(旧約聖書)の登場人物。彼らの住むソドムが滅ぼされることを知り、ロトは妻と二人の娘を伴ってソドムを脱出し、近隣の都市へと向かう。逃げる際に「後ろを振り返ってはいけない」と指示されていたが、ロトの妻は後ろを振り返ってしまい、塩の柱になってしまったという話。)が中央に設置され、それを囲む3つのスクリーンでは、「ロトの妻」と名付けられた死海のほとりの岩などが写し出され、不気味な雰囲気を漂わせる。像は塩分を含んだ石で出来ており、動物たちは時々ペロペロ舐めにくる。この像こそが少しずつ変容していく「彫刻」なのだ。
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