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真夏の夜のSAL VANILLA



SAL VANILLA 公演情報 Vol.3(3回シリーズ)

9月7日〜11日、横浜のBankART Studio NYKで、パフォーミングアートユニット「sal vanilla」の公演が行われた。
PEELERの3回シリーズの最終回は、公演のレビューで締めくくる。
 
   
  +813
TEXT 藤田千彩

夜の横浜、BankART Studio NYKは、大きなモニター、ミラーボールで照らされていた。
sal vanillaの公演に集まった人たちは、ドリンクを片手に、眼前に広がる海を見ながら語らっている。
今日は「+813」の公演がある。
この「+813」は、sal vanillaの主宰である蹄ギガのソロ公演「MINIMALMAN」、sal vanillaのメンバーによる「人ノ像」で構成されている。
夏の終わりのお祭りを楽しみにしているように。
これから起こる出来事にわくわくしているように。
私もそんな気持ちを抱いた観客の一人であった。

はじまりの予感

私が行ったのは9月8日。
日替わりのサウンドアーティストは、KNOTOだった。
本編である「MINIMALMAN」が始まるまで、音を出しつづけた。
体に来る振動が印象的。
こうした演出が、sal vanillaらしさ。
パフォーマンスを見る目的だけでなく、
音などにより、事前に他の体の器官を気持ちよくさせてくれる。
さっきまでの港の喧騒を忘れ、
すっかり私の体は、ステージに集中していた。
 
 
 
 
 
「MINIMALMAN」

男、というのは、大変な生きものだと思う。
時々男になってみたい、と思うけど、頼りにされたり、前に出たり、「強い」部分の男を見せられると、女である私は「やはり男ってすごい」と思うのだ。

「MINIMALMAN」は、男の物語。
ストーリーがあった訳ではない。
だから、物語、といっても、本当は違うのかもしれない。

私には「一生懸命毎日生きている男」を表現しているように感じた、一人舞台であった。
一番印象的だったのは、自転車を必死な顔でこいで、舞台をぐるぐる回っていたシーンだ。
がんばって、もがいて、目標をつかもうとする。そんな姿に見えたから。

ぐるぐる回る、という繰り返しの行動に見られるように、この「MINIMALMAN」は、身体表現におけるミニマル・ミュージックである。
繰り返し、リズムを刻む、そういった感覚で作られた「MINIMALMAN」は、身体を動かすだけのパフォーマンスと大きく異なる。
サウンドや映像のコラボレーションが成功している。

蹄ギガの動きと、映像、照明、サウンド、といったものが重なるとき、蹄ギガが世の中の男の代表選手のように見えた。
いや、この映像、照明、サウンドによって、蹄ギガは男らしく引き立たせるように見せられた、という感じ。
そして、最後に「やっぱ男ってカッコええわ」と思った。
「人ノ像(ヒトノカタチ)」

先ほどの「MINIMALMAN」が、蹄ギガのソロ公演だとするならば、「人ノ像(ヒトノカタチ)」は、SAL VANILLAのメンバーによるグループ公演。

最初にSAL VANILLAを見たときの記憶がよみがえる。
それは、人間が人間じゃない、舞台が異次元の世界、体を打つような音、SFの世界とか、近未来ってこういうの?とか、とにかく驚いた記憶だ。
一瞬、この記憶を思い出す。

光と影、白と黒のボーダーに彩られたステージ。
浮かび上がる丸刈りの男たちが、椅子を使い、体を動かす。
映像や照明による演出で、目が追いつかないくらいに、男たちの動きはより機械的に見える。
やがて映像は風景となり、男たちのいるその場所は日常的なものに見えてくるが、どこか異空間であり、すでに私もトリップしていた・・・。
 
 
 
  そして・・・

実はあまり記憶がない。
というのも、見たあと覚えているのは、外に出たとき「あれ?私こんなところにいたっけ?」と思ったこと。
開け放たれたドアの向こうに広がる海、遠くに見える観覧車や赤レンガ倉庫などの横浜の夜景に、しばし呆然としてしまったのだ。
それくらい私はSAL VANILLA「+813」の公演に入り込んでいた。
単なるパフォーマンス集団ではなく、動いている男たちはどこか機械的で、目に入ってきた映像や照明は近未来なものに感じ、耳や体で受け止めた音はリズムがあり、体に刺さった。
作り出された空間のせいだろう、と私は思う。
とにかくこの2時間あまり、私は横浜BankARTにいたことを忘れて、本当にのめりこんでいた。
いやはや、すごかったね、としか言えない。
 
   
  インフォメーション

「+813」(「人ノ像」、「MINIMALMAN」)
9月7日(水)、8日(木)、10日(土)/開演19:00
9月11日(日)/開演17:00
「.JP」
9月9日(金)/開演17:30
場所/BankART Studio NYK 
問い合わせ/SAL VANILLA(サルヴァニラ)
info@salvanilla.com
http://www.salvanilla.com/813/
 
 

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