間違いなく片田舎だが、手つかずの自然はどこにも残っていない。農業用水を通じて奇妙なにおいが行きわたっている。青い歯をしたセリアの大叔母があごの下にできた腫れものにつける軟膏は、この水と同じにおいがする。用水路は高台から四つの畑をとおって引かれているが、ふもとのセリアの家の畑に届く前に涸れてしまうことも多い。 小川良子 思いつきで書いた断片的な小説より