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[その形容詞を待ちわびる−小川良子]
毎晩自分が主人公でない夢を見た。ミランダはその傍らにいて、彼らが大げさに泣き叫んだり大喜びでとび跳ねるのを、たいてい何の感情も持たずに見守っていた。
夢から覚めると両手を顔に押し当て、素肌の真新しい感触を確かめて満ち足りた気持ちになった。けれどもバスルームの鏡に映った本当の顔は、ひっきりなしに水道工事とガス管工事をくり返しているアパートの前の道路のように荒れ果てていた。夢の中の主人公について憶えているのは、耳のあたりのクローズアップだけだった。
小川良子 思いつきで書いた断片的な小説より
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