愛知・岐阜・三重
アートへの入口
TEXT 野田利也
「アートに関するメディアが少ない」これは私がPEELERをはじめた動機のひとつであるが、同じ思いを持った人が他にもいたようだ。2005年12月、ひとつのウェブサイトがオープンした。いーじまさとこ、田中由紀子、小黒によるArtholicである。それは「美術中毒」を意味する造語で、「東海地方のアートに関する情報やアートに関わる人を紹介し、作家や作品と鑑賞者をつなぐことを目的としたインターネット版フリーペーパー(Artholiウェブより)」である。創刊号のコンテンツを覗いてみると、例えば美術館やギャラリーへ行くといった構えた感じではなく、カフェでのんびりしている時に、ふと壁に掛かった絵が気になった、といった日常的な雰囲気が見て取れる。「特集」のコーナーでは、「アートな生活」と題して、まさに"お茶を飲みながら作品鑑賞ができるギャラリーカフェ"を紹介している。また「アートのコツ」は、アートを楽しむコツを紹介するコーナーで、特集にちなんで「アートと暮らすコツ」を、女性会社員の何気ない日常、そしてそれが幸福に昇華する様子で伝えている。
もちろん展覧会のレビューやアーティストへのインタビューなど、お約束のコンテンツもあるのだが、特筆しておきたいのが「ブックレビュー」である。本は最も日常的で、安価な手に取りやすいアートワークの集積であることに気づかされる。
彼女たちの仕事には、専門性や高い知識がなければアートの話ができないという先入観と現実を打破、なんて難しい言い方ではなく、新しいアートの楽しみ方やアートとの出会いの提案を期待したい。
ウェブという不特定多数に向けて発信されるメディアでこそ、それは可能だ。特に最近のウェブ業界ではSEO(いかに検索エンジンのリサーチ結果で、上位にサイトをヒットさせるか)が注目されている。アートの専門用語ばかりのサイトでは、「その筋の人」にか閲覧されないであろう。アート以外のキーワードがたくさん登場するであろうArtholicの今後が楽しみである。
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