|
|
|
|
|
《Tsubomiφ》 ミクストメディア サイズ可変
2008年(インスタレーション内の彫刻は 2008年-2009年) |
死と再生の物語
TEXT 田中由紀子
昨年、福岡市の三菱地所アルティアムで行われた公募展「For Rent For Talent! 4」に続き、この3月に開催された「名古屋発・現代美術展
Dアートフェスティバル」でもグランプリを受賞した清水陽子。今展では、縦横が約150センチメートルもあるレリーフ状の作品を中心に、立体、半立体、映像からなるインスタレーション《TsubomiΦ》を展開し、会場を異空間に変貌させた。
|
《Tsubomi 11, 12, 13》(部分) ミクストメディア 縦145cm x 横92cm
(3点) 2008年 |
|
|
|
|
《一杯のブレーク(数学者のつぶやき)》 樹脂、陶器、映像 サイズ可変, 2009年
|
正面に据えられた大きな額縁の中には、帯状の半立体が花びらのように連なり、女性器を彷彿させるフォルムをかたちづくっていた。表面は丸形や花形の浮き彫りでびっしりと埋め尽くされ、先端は額縁からはみ出している。そのさまは、海中にうごめくタコやイカの足のようでもあり、白骨化したサンゴがこびりついた岩肌のようでもあった。中央で目を閉じる少女は、眠っているのだろうか、死んでいるのだろうか。あるいは、これから生まれ出るのを待っているのだろうか。水の泡を想像させるカッティングが施された不織布が、床に敷かれていたことからも、海底に及んだ私の発想はそれほど的外れではなさそうだ。
清水は、今回と同様のモチーフからなるインスタレーションに昨年から繰り返し取り組んでいるが、そこには相反するイメージの共存をしばしば見出すことができる。たとえば、女性器のグロテスクさと少女の清らかさ、あるいは、軟体動物が放つ動的な生命感とサンゴが醸し出す静的な死の気配が作品には混在している。また、生きているようにも死んでいるようにも見える少女や、生命を育みも奪いもする海は、生と死の両方を見る者に想起させる。このように逆のイメージを組み込んだり、両義的なモチーフを用いることにより、生と死が表裏一体であり、その循環こそが自然界における生命体の美しさであると示唆しているように思えた。
学生時代には生物学を専攻していたという清水。彼女ならではの、自然や生命体への興味やアプローチから生まれた作品が、美しさとおどろおどろしさや生と死の境界に死と再生の物語を立ち上げることを今後も期待したい。 |
|