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『煙突のある風景』(水彩)
原井が住む国道沿いにも「テロ警戒中」の看板がある。
彼は「こんな片田舎まで、テロの看板があるとは・・。
世界は石油でつながっているんだ」と、思ったそうだ。 |
日常生活の本質を開示する
TEXT 友利香
原井輝明は1996年東京から宇部に帰郷。その後も、関東を中心に個展をしている。
それらの作品は「セイタカアワダチソウのある風景」や「マンション夜景あるいはネリーのいる部屋」・・・などというタイトルが並ぶ。彼は日常の何気ないものの中に潜む意味深さ、いかがわしさを直感する作家なのだ。
その原井が、今回初めて地元・宇部で新作を13点発表してくれた。テーマは「石油」。
世界の政治・経済など、私たちは石油で操られた世界に住み、田舎町のテーブルまでも石油製品であふれ、
石油のない生活は不可能であることを誰しもわかっては、いる。
地元紙はこの展覧会を「石油社会の終焉テーマ」という見出しで紹介したが、これは大いに不本意である。
作品には終焉どころか繁栄・平和・警告・告発・啓蒙的挑発的な態度もない。郷愁、記憶もない。では、何が在るのか。
彼は、自身が撮った写真をもとに描く。彼の「見る」という行動は「点眼する」という言葉がふさわしい。
景色は点眼され涙腺を刺激する。涙腺は異物の飛来で潤う。景色は潤いと共にカンバスに投影される。
正統に淡々と付加価値なしで「描く」という行為は、むしろ逆に攻撃的な行為ではないか。(※)
描かれたものも逆に攻撃性を帯びていないだろうか。ここでは石油の怪しさを感じざるを得ない。