建築屋が覗いた、青葉の縁日
TEXT 曽根健一朗 |
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せんだいメディアテークで開催された「青葉縁日2-おもしろ改造工場の夏祭り」
この文章は空間構成に関して述べる。
面子
せんだいメディアテークで開催された「青葉縁日2-おもしろ改造工場の夏祭り」
この文章は空間構成に関して述べる。
空間構成を担当したのは、東北工業大学/槻橋修研究室+渡邉武海
槻橋 修:建築家。TEEHOUSE建築設計事務所。東北工業大学講師。
渡邉武海:デザイナー。設計及びグラフィックデザイン。
そして、参加美術作家らが下記。
タノタイガ「タノニマス」
エキソニモ「Object B vs」
KOSUGE1-16「クロスカントリーDX
梅田哲也と堀尾寛太「落と」
村上タカシ&がんがんモリィ「ぽんぽん」
今回、空間構成を担当した槻橋氏、渡邉氏、会場設営のために動いていた学生スタッフ、皆 知った顔ぶれなのでレビューを書くのは気恥ずかしいが、公正をもって評価する。
縁日
先ずは「縁日」とは?
えんにち【縁日】
〔有縁(ウエン)の日・結縁(ケチエン)の日の意〕神仏の降誕・成仏(ジヨウブツ)など、何かの縁が有って、その神仏の供養や祭りを行う日。
字義的にはこういう意味だが、それ以上に夜のお祭り的な空間が思い浮かぶのではないだろうか?
日本の古典的な、夏の思い出的な風景。
そう。夏のいい思い出的な。
smt 仙台メディアテーク
設計は伊東豊雄氏。5mを越えるその天井高、空間的には大きく冷めた空間。
先鋭の近代建築の一つ。
広さは十分だが、クセのあるセッティング方法には難を感じる建築だと思う。
空間考察・動線計画
基本的にsmtでは決った鉛直平面のパーテーション(可動壁)を天吊りで用いる。
ほとんどの展示では、壁に向かって平行垂直方向で用いているものだ。
が、今回の展示では面白い展開を。
6月ころから「壁を斜めに配置してみよう」との案が漠然と立ったそうだ。
でもそれだけでは端的であって、考察力には乏しい。
しかし、
その後、各作家が「必要」とする面積を算定。
それに対して適切な平面面積を割り当てる。
結果、斜めに配置される壁面も単純化。
ココではお見せできないが、多くのスケッチ、パターン、模型、図面が存在する。
流石は建築家ら。建築空間の算出方法は適切に行われていたと思う。
空間を作り上げる上で大切なものは、他にもある。
動線計画だ。つまりは、人の歩く経路。
「縁日」的に言えば、境内での出店を繋ぐ道とでもなるのか。
空間を考察する段階で、平行してこの作業は進められていたと思うが、とても難しい。
実際、図面や模型を見て空間構成やそこでの体感スケールも持ち合わせる設計屋は数少ない。
そこをクリアしないといけない訳ではないが、今回の案件の中では、かなり苦労しただろう。
なんせ、天井が高い。
基本的な入り口は一箇所。
そこが動線の始まり。
何事においても同じ事が言えるが、「入り口」は大切である。
入り口には屋台的なチケット売り場があるが、そこから会場内に足を運ぶ事ができる。
入り口を通ってからは、各セクション、作家の作品を見れるわけだが、自然と動線計画の中に入れる様になっていた。
しかも、各セクションがいい距離感と目線の区切りをもっている。
大
きな空間で心配していたこと。それは無駄に広くある目線範囲。
これは今まであったsmt展示であった事。
先に触れたように、天井の高さの問題や構造壁が無い建築構造ゆえの目線の通りよさが仇となった展示を多く見てきた。
今回、完全にそれを払拭出来たとは言えないが、かなりの度合いでsmtの特性を知り、新たな使い方のテストケースが出来ていたと思う。
立派な空間構成と動線計画だっただろう。
設営
各作家に混ざって目立って作業をしていたのが大学生たち。
よく頑張ったと思う。
でも気になった点が何点か。
空間構成に携わった槻橋研、建築学科のhokusui など、建築に携わる輩が多くて美術作家やその手を主体としている学生が余り見当たらない;
別に問題視するわけでは無いのだが、違和感。
建築とARTはまったく違うもの。
建築の表現方法の一つにARTがあっても、ARTが建築に変わることは無い。
やはり建築は図面を通して、相手に伝える必要のある仕事。
それを主体にしている輩が表に出てきて目立つのは、これからのアートシーンの中で考える点が多く出てくると思う。
それにしても、短い搬入期間で大きな空間表現を具現化できたのは、素晴らしいこと。
携わった方にはいい経験と、今後の考察点が見れたのではないだろうか。
講評
空間構成としてはなかなかよかったと思う。
あえて上げるとすれば、天井高に変化があってもよかったのかも。
「縁日」という空間にしては、広すぎるsmt。もっとゴチャゴチャして雑な感じでもよかったのかも知れないが、これが現代的に表現した「縁日」だったのだろうか?
更なる質の向上と計画の向上を求めつつ、来年に続けてもらいたい。
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