暗闇の中、私を襲う、みたいなもの。
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藤田千彩
そこは、植物を扱っている会社、と言う。
確かに建物に入ると、観葉植物から庭に植わっている花や木まで、多くの植物が立ち並ぶ。
室内というのに、ちょっとした森のように感じる。
その森は照明の入らない室内全体に広がる。
家が燃える映像が映し出される。
本当の「火」に、模型にしか見えない「家」。
カメラの手ブレが、恐怖におののく手の動きに感じる。
パチパチ、と木が燃える音。
赤く、ごうごうと家を覆う火。
実際の火事は目の当たりにしたことがないけど、何度か感じたことがある火の恐ろしさを思い出す。
模型だと分かる家が、火に覆われて燃えて倒れた。
だめだ。
怖い。
そんなブルーな気持ちが心をふさぐ。
さらに、部屋の奥。
暗い部屋に立ち並ぶ観葉植物の中に、また別の映像が映し出される。
真っ黒な闇の中を、真っ白いワンピースを着た女性が、振り返ることもなく走る後ろ姿。
その場で手足を動かしているだけの、あきらかに「うそ」走り。
しかし荒い息遣いと枯葉や土を踏む足音がスピーカーから聞こえる。
先ほどの火から逃げるようだ。
うそ、と分かっているけど、切羽詰まった感じが、ブルーだった心をあおり立てる。
私も何かに追われている気持ちになる。
どうして「うそ」と分かってしまうのに、引き込まれてしまうんだろう。
どうして「ふり」と気づいてしまうのに、見入ってしまうんだろう。
「現実もそうでしょ?」と作家の稲垣智子に言われる。
ああ、そうかもしれない。
作りもの、ありえないシチュエーションはあふれている。
「○○“みたいなもの”」ばかり、食べたり飲んだりする日々。
「○○“のような”」ものを目にし、手に取る毎日。
燃えている家は、「家“みたいなもの”」であり、走っている女性は「追われている“ような”」状態なのだ。
そして、会場である場所さえも、森“みたいな”、木々が植えてある“ような”ところであって、実際は違う。
現実と虚構の世界の境目を、稲垣のインスタレーションは結んだと思った。
(おまけ)
金沢は駅(1)と繁華街(香林坊)の距離が離れていて、大きな町に見えます。
しかし町にはギャラリーがあまりないそう。
G-WING'Sギャラリーも郊外にあり、北陸鉄道という電車に乗って行きます。
もうひとつ行った、OXYDOL
gallery(2)は、なんと金沢港の近くです。
味噌や醤油の製造が行われていた場所が、いくつものギャラリーやアトリエになっています。(3)
駅の近く、と言えば「金沢市民芸術村」。
私が行ったとき、特になにもしてなかったのですが、ちょっと歴史を感じる建物にびっくり。(4)
内装も木々が組み合わされている天井など(5)、創造の感情がかき立てられました。
(プレゼント)
OXYDOL galleryのある、金沢・大野の醤油蔵で買った、金沢の醤油と加賀野菜を使って作られたドレッシング(6)を1名様にプレゼント。
我が家でも使っていますが、いつものドレッシングとは大違い。
あまり味わったことのない味、風味を、旅行気分とともに感じてみませんか?
e-mailでご応募ください。件名を「ドレッシングプレゼント希望」とし、お名前、住所、e-mailアドレス、PEELERへのご感想を記入の上info@peeler.jpまでメールをお送りください。応募締切は5月31日(水)。当選は発送をもってかえさせていただきます。 |