最終回のドラマな夜
TEXT 友利香
昨年、商店街シャッター画の制作が縁で知り合った、美術家と地元大学美術部の学生たちの展覧会である。
その学生たちはこの春、宇部を離れることになり、これは2回目にして最後のグループ展だとのことだった。
テーマは、旅立ちに際して希望を意味する「光」、日没と共にスタートし日の出と共に終了する「 一夜限り」という、なんともシャレた展覧会。
「アンリ・ルソーの夜会」を思い浮かべながら、夜な夜な行って参りました。
原井憲二「どまの日の丸」(a)
会場に到着すると、玄関戸には、早速、日の丸!
昨年のSpace
Kobo&Tomoでの展覧会では、日の丸をテーマにインスタレーションされていた、と聞いてはいたが、「夜会だから、月光でしょう」と、イメージして出かけていた私は、入り口で恥じることになった。
原井輝明「あかり」(b)
今回は、ビデオ作品。
「夜会」の開催時間に、ぴったり合わせて灯された蝋燭は、夜が深まるにつれ、だんだん短くなっていく。
展覧会終了の日の出時間ぴったりに姿を消す。
私にとっても「一夜限りの展覧会」。
溶けた蝋は、鑑賞者の心の中へと流れ込み、限られた時間の風景が堆積していく。
岩本知子「無題」(c)
アトリエ2階の押入れに、卵がそっと息づいている。
大仏の形をした影は、進学で宇部にやってきた作者が、この地で多くの糧を手に入れ、成熟進行形だという自身を見せている。
駒井和彬「光が溢れる」(d,e)
古い家屋には、隙間が多い。その隙間から射し込む光を、小さな写真(日頃私たちが何気なくくらしている光景)を盛ることで表している。
その光は、瞬時とはいえ、私たちの日常の間をくぐり抜け、今ここにたどりついているはずなのだ。
さらにこれは、会場内の数箇所に置かれ、この夜会の夜、天を移動する月からの光によって
見られる作品が移動するしかけになっている。
作者は、もうすぐ宇部に心を残しながら、遠方の実家へと帰ると聞いた。
私には、この地で過ごした日々をフラッシュバックしている彼が見えた。
翌9日。朝起きて、アトリエに行くと、作品はすでに撤収されていた。
目の前にあるのは、築70〜80年という家屋(アトリエ)だった。
岡本雄太は、数年間、日記のように、絵を描き続けている作家。(f)
その日の心象が、切手位の大きさの紙に描き込まれている。
今日の日記はどんな作品に仕上がるのだろう。 |