けはい の ありか(3回シリーズ/1回目)
TEXT 草木マリ
はじめに。
突然ですが、みやじけいことは大学時代の同級生で、かれこれ10年のつきあいになります。その間、私たちは側で制作をしたり、近くへ遠くへ遊びに出かけたり、別々の場所で別々の仕事をして、まじめな話やくだらない話、泣いたり笑ったり。そんな記憶をそれぞれの箱におさめてきました。同じものを見たのに別々のことを考える、一緒にいるのに別のものを見てる、そのことが寂しくもあり、愛しくもあり、この不思議な〈記憶のぶれ〉のようなことを、よく話題にしました。
みやじが昨年から実施している「カラダで感じる美術館」も、〈記憶〉というものが密かなテーマになっています。
ふいに何かを思い出す時、いったい何がその記憶を引き出したんだろう。記憶のスイッチは案外、なんでもない、関係のないようなささやかなものであったりします。このワークショップでの思い出が、遠い未来に、素敵な気持ちを引き出すいくつかのスイッチになればいいのに、そんな目論みのプログラムです。
昨年に引き続き、私も数名の友人たちとともに、みやじのこのプログラムの助っ人に岡山へ行ってきました。せっかく打合わせ段階から見てきたプログラムなので、ちょっと腰を落ちつけて、じっくりレポートしようとおもいます。
ということで、「カラダで感じる美術館」レポート、3回シリーズでお送りいたします!
その1:チルミュとみやじと、感じるチーム。
“チルドレンズ・アート・ミュージアム”(通称:チルミュ)は、大原美術館が4年前より開催している、子どもたちのためのプロジェクトです。夏休み最後の週末に(最後の宿題を片付けるべく?)たくさんの子どもたちが訪れ、通常のお客さんもまじえて、この2日間の入館者数は5000人を越えました。
ちなみに参加アーティストや博物館実習生を含むスタッフはなんと150人。それはすごい賑わいだったのですよ。まさに「お祭り騒ぎ」。広場ではダンスのワークショップ、中庭ではパノラマ絵画のワークショップやアートショップ、その他、敷地内のあちこちでさまざまなプログラムが繰り広げられ、あっちからこっち、こっちからあっち、人の波は絶えず館内をめぐるのでした。
大原美術館には本館、分館、工芸館などいくつかの建物がたっています。本館にはエル・グレコやモネやルノワール、ゴーギャン、ピカソ…、みやじけいこのワークショップの舞台である工芸館も、棟方志功やバーナード・リーチ、河井寛治郎と、そうそうたる顔ぶれ。
そんな工芸館の見どころのひとつは、その設計が染色工芸作家、芹沢ケイ介だということ。芹沢の友人でもある作家たちのために、床の素材や窓の飾り、照明器具、展示ケースにいたるまで、それぞれの部屋にそれぞれの工夫をこらし作られた工芸館を、裸足になって練り歩く。通りすがりのおじさんおばさんもうらやむ気持ち良さ。じつに贅沢なプログラムです。
さてここで、いまさらながら、みやじけいことは何者か?
彼女は(広い意味で)「窓」をモティーフに作品をつくっている作家です。岡山出身で、ここ大原美術館での展示経験もあり。そんなこんなで(?)、昨年、このチルミュへのお誘いが来たようです。
みやじと岡山へのりこむメンバーは、ミュージシャンのイケダ氏、私、それから今年から参加のヒノ氏。この4人で事前にプログラムを練り、グッズ制作を夜な夜なこなし、いざ出陣。前日に博物館実習の学生さん7名と現地で合流。ここでやっと「感じるチーム-2005」が結成されたのです!
さて、だらだらとなりましたが、今回はこのあたりで…。
次回はプログラムの内容と、実際の様子を紹介します。子どもたちのテンションに尻込みしつつも、負けじと踏んばる「感じるチーム」の運命やいかに!
チルドレンズ・アート・ミュージアム 2005
みやじけいこ「カラダで感じる美術館」
大原美術館 工芸館・東洋館(岡山県)
2005年8月27日・28日 |
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著者プロフィールや、近況など。
草木マリ(くさきまり)
1976年京都府生まれ。
1999年成安造形大学造形学部卒業。
京都芸術センターで1年間のアシスタントスタッフを経て、
現在、大阪成蹊大学芸術学部綜合芸術研究センター勤務。 |
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