あおい光に満たされる
TEXT 石山さやか
ギャラリーの外にまで青白い光が漏れてきていた。奥野ビルの5階、APSでの国谷隆志の新作展である。
光のもとは何本ものネオン管。この先通行禁止とでもいうようにスペースの真ん中に、縦一列に配されている。
わたしには、現代的な素材の作品を見ると何となくたじろいでしまう頭の硬いところがある。このときも「クールな雰囲気だな…」とおそるおそるギャラリーに入った。
作品に顔を近づけて、ネオンの光を間近で浴びる。見ると、ネオン管の一本一本はまっすぐではなく、ポコポコとした球のつながりでできていた。全体的には駄菓子の棒ゼリーとか、海の生物を連想させるやさしいフォルムだ。
これは作家が自分で吹いて作ったガラス管を、つなげて加工しネオン管に仕立てたものだそうだ。言われてみれば管のそこかしこにつなぎ目が見えるし、球の大きさも一定ではない。話を聞いて最初のイメージからは一転、「暖かみのある素敵な作品だなあ」と感じた。わかりやすいものである。
とはいえこの作品の素材はガラス。いまにも触れそうな近さで作品を眺めていると、一瞬遠近感が狂ってよろけそうになることがあり、かなり危ない。展示されていた他の二作品は5センチ程度のガラス球で、持ち帰りたくなるほど可愛らしい。でもこちらも、うかつな扱いをしたらすぐ割れてしまいそうな、華奢な透明感を帯びている。
美しいけれど、触れることができない。青い海の中でくらげやイソギンチャクと漂っているかのような展示だった。
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