左)
「デビルのトルソ」
h95×w37×d40(cm)
檜、漆、麻、銅、彩色
2005年
右)
「天使のトルソ」
h106×w37×d44(cm)
檜、漆、麻、銅、彩色
2005年
PHOTO:KATSURA ENDO |
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天使のマスクはデビルが、デビルのマスクは天使がつけるのであろう。
TEXT 野田利也
会場に入るとまず白と黒のトルソが目に入る。白が「天使のトルソ」、黒が「デビルにトルソ」である。天使には羽根の生えた白い翼、頭上に「輪」があり、デビルにはコウモリのように羽根のない黒い翼、臀部から先端が槍のようにとがった「尻尾」が生えている。木彫によるそれらは、幼児ほどの大きさで、体の反り具合から飛翔しているように見える。
天使と悪魔。対極の存在(例えば、男と女)は互いを最も謎な存在とするものである。また同時に、最も興味を惹かれる存在でもある。
悪魔は天使になりすまし、天使は悪魔になりすまし、お互いに近づきあうだろう。という物語を夢想させるかのように、壁には「天使になるためのマスク」と「デビルになるためのマスク」という作品が掛けられている。そのマスクは仮面舞踏会で使われるような風体で、黒いデビルのマスクには角が装着され、白い天使のマスクには翼の彫刻がほどこされている。その確かな技巧からは、表層に表れるもの以上に多くの物語を紡ぐができる。恐らく、執拗に削り上げていくという行為は、ただの技巧という域を超え、仏師が仏像に魂を込める行為と同等なものなのだろう。
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