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New Sprits 福島−物語をめぐって
鴻崎正武/作品部分
高橋克之/作品部分
小林浩/作品部分

展覧会フライヤー
「地方」という「味」を確かめに行こう
TEXT 藤田千彩

「PEELER」を始めてから、「地方」というものを以前よりまして、より意識するようになった。
いまやどの町にも美術館があり、作家がおり、展覧会やイベントが行われている。
私の故郷の岡山もそうだし、今住んでいる東京もそうだから。

東京でのデキゴトは、多くのメディアに取り上げられている。
見たことがないのに、「見た気持ち」になってしまう。
取り上げられたメディアが多ければ多いほど、その展示や作家が「スゴイ」と思ってしまう。
行列の出来るラーメン店に並んだのに、大した味じゃなかった、ということのように、本当は、自分の味覚(視覚)をしっかり持っていれば、必然的にその「スゴイ」は「ヘボイ」だということに気づく。
そして地方というマイナーなものは、行列のできるラーメン店どころか、知られざる秘境の蕎麦屋みたいな感じだろう。
「ヘボイ」と先入観で語られがちなのではないだろうか。

福島まで行ったのは、自分の味覚(視覚)を確かめに行った。
東京にいるだけでは、決して知りえなかった(見ることのなかった)作家の作品を見ることができ、そして、それらはどういう味をしているのか、を知りたくて。
美術館外観
まず、福島県立美術館の立派な建物に感動した。
信夫山という福島市の名山のふもとにある。
横に広がる立派な建物。さすが美術館、という風体であった。

今回の目的は、鴻崎正武、高橋克之、小林浩という福島県出身の3人による展覧会「New Sprits 福島」だ。


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入ると、鴻崎の目にもあざやかな蒔絵のような、「洛中洛外図屏風」のような、金をたくさん使ったテンペラ画に仰天する。
描かれている人や物の細かさ、色使いに、本当に驚いてしまい、ひとつひとつ見入ってしまった。
SF小説や妖怪マンガみたいな、空想めいた感覚も好きだ。
下品になりきれない、押さえた感じの色づかいも見ていて、お腹いっぱいにならなくて済む。
個人的には2001年頃の、全部手書きで細かく描いているほうがいいと思う。
2005年の近作は、人は写真あるいは写真のトレースで、味が薄くなっている気がした。


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目がギラギラした後で、高橋の部屋へ移動する。
鴻崎と180度違う灰色の世界は、脳みその違う部分をまた刺激する。
タイルやブロックを格子状に積み上げたものを、「上から」と「下から」、油絵でごりごり描いている。
壁一面に広がる絵の横には、小さな話が載っている。
読まなくてもいいのだろうが、人探しをするミステリーのような話でこれも面白い。
格子の部分を絵の具で盛り上げているのが、私は好きだった。
作品自体は暗いけど、キャンバスに引き込まれる感がとても魅力的である。
作家ホームページと合わせて見ると、より楽しめる)


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最後に小林の作品を見て、ほっと落ち着く。
銀座のギャラリーなつかなどで、一番見慣れているせいもあるが、味としては、3人の中で一番優しいからだろう。
描きたい題材をパソコンで取り込み、階調を作り、そのとおりに絵の具を盛り上げる制作方法を取るそうだ。
ぬいぐるみを題材にしてあるせいか、空中に舞っていようが、組み合わせが変であろうが、カワイイ!
この青焼きのようなブルーも、私は好きだ。
そして、小林が去年オランダにレジデンスをして制作したという、セラミック作品が今回の目玉である。
セラミックがこんな面白い作品に化けるなんて、とくすくす笑いながら見ていた。

思ったより福島は遠かったけど、私にはちゃんとした味ばかりで、行ってよかったと思う。
海外に行くことばかり目を向けるより、地方に足を運び、作品を楽しむことをしてはどうだろう。
地方はあなどれないよ。

New Sprits 福島−物語をめぐって

福島県立美術館
2005年6月18日(土)〜7月18日(土)

著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/


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