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橋本真之『揺らぐ日々の中に』
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1「果樹園−果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実」2「果樹園−変換」[+zoom] 3「果樹園内部」4「重層運動膜・切片群」[+zoom] 5 「果樹園内部」
あ、あの…噂の「果樹園」が…!!
TEXT 友利香

 鍛金という技法は、叩くと延びるという素材の性質と叩く者の意志とが融合することで、一つの形へと結実することができる。
 橋本真之(鍛金造形作家)・《果樹園−果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実》。
1978年制作開始。発表毎に最初の構造が内包され重構造となり、それがまた反転して…というように多重構造になっていき、今では全長38m。その曲面はリズミカルに大きくうねり、立ち上がり、内外多方向への力を見せている。空間に感じる野太い中心軸。ここに橋本の意志の芯を見る。
30年弱もの間、橋本のエネルギー(「時」)を食べて成長してきた巨大な生命体である。
と、目の前の物が何であるかを、まず外観(表面)で認識する。

 内部をのぞき込む。生きた「湿」を感じる。
前の作品が隠れていたり、隣接パーツへと飛び出していたり、パパイヤみたいな実が可愛いかったり、動的であったり、優しかったり…それぞれ異なっているが、一つの連鎖した運動体世界が拡がっている。表裏等価の意味で開けられたと思われる穴は、内部世界の水源であり、且つ、光源でもある。底に溜まった水と揺れる光が、「湿(生)」をよりなまめかしく匂わせている。いや、小道具はいらない。銅膜だけで充分だ。銅と橋本の「時(生)」に咽る。 
内から外、外から内、手前から奥、奥から手前…と、何度も合わせ見る。
舞台に表も裏もない。
 
 この《果樹園―》は、美術館2階和風展示室展示作品(注1)のうちの一点。
これは茶室内に3点、茶室から外へと広がる空間として、バルコニーに1点。外庭に2点という構成になっている。展示からも、「内部も外部も等価値に成立し得る(注2)」と位置づける橋本の造形思考が窺える。
 

床壁「凝集力」四畳半「凝集力・展開」 [+zoom

床の間「切片群」[+zoom
 室内展示の床の間。
床壁には、軌道を描いて出発に戻ってきたことを意味する《凝集力》、ただ一点。
床框(とこかまち)には大量の《切片群》を積み上げる。
《切片群》は、《運動膜》(注3)の曲面を溶接する際、付加する銅板の残りの形(銅板)を廃棄せず、再びひとつの造形物として立ち上げたもの。それが逆に、元の《運動膜》の形態を動かし始めたという経緯もある。その一本、また一本と「積み上げていく」という橋本の行為は、彼の軌跡を語ると同時に、新しい展開を予感させる。
ああ…
彼は、これからも金槌を打ち降ろし続けるつもりなのだ。
なぜなら、彼自身、《運動膜》なのだから・・・。
その打撃を受け止め続ける橋本の、左手になったような気がした。

注1)この和風展示室展示事業は、茶室空間が、歴史的形成過程において「表現の先端的現場」としてあったということに注目した企画で、毎回ほぼ1年間の会期で展覧会が開催されている。今回で9回目となる。(展覧会・リーフレット)
注2)第16回現代日本彫刻展・リーフレットより作家コメント
注3)「果樹園ー」はいくつかの《作品・運動膜》が重なり、連なってできている。
また橋本は、内外等価な膜状の作品構造として、反転し展開する運動そのものを自分の造形活動と捉えて「運動膜」と定義している。
さらには、自身の存在、生をも含めた自身の作品世界の構造を「絶対運動膜」と呼んでいる。
(橋本真之 「造形論のために」Art & Craftを参考にした)



橋本真之『揺らぐ日々の中に』

山口県立萩美術館・浦上記念館
2005年4月23日〜2006年3月12日

著者プロフィールや、近況など。

友利香(ともとしかおり)

10月から開催される第21回現代日本彫刻展。
会場下見で、作家さんも多数来宇!
設置は8月中旬頃かな〜。待っててくださいね〜。
出品作家20名は↓こちらでチェック!
http://www.city.ube.yamaguchi.jp/choukoku/exhibition/list.htm

「彫刻の街」山口県宇部市在住。子供を通じて児童心理と絵画との関係に興味を持つ。
真の開眼は若林奮。好きな作家は柳原義達から会田誠と幅広い。
現在、アートを広めようとボランティア活動中。
宇部の彫刻


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