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佐々木加奈子展 'wanderlust'
 
佐々木加奈子《swing club》2003

切り取られた「物語」
TEXT 藤田千彩

美術手帖6月号の特集にあるように、絵画には「物語」性を持っている作品が多く見受けられる(ような気がする)。
佐々木加奈子の写真作品もしかり、だ。「写真」という一瞬を切り取るメディアだからこそ、写っている一瞬の前後の時間はないのかもしれない。偶然ではなく、意図的にその一瞬を作り出すことも可能であるからだ。
しかし私には、どちらかというと長い前後があり、その一瞬をとらえた「偶然」だと思える(というか、そういう風に見える)。
木にぶら下がる少女の作品《swing club》。えいや、と飛びかかったのか。何かにつたって木にたどりついたのか。あるいは、向こうにいる彼氏にウインクをしているかもしれない。お母さんが呼んでるかもしれない。
佐々木の写真、たった一枚だけで、そういう「物語」を自分の頭で作ることができる。ずいぶんと眺めている。私は、空想という心が豊かになる旅から、まだ帰って来れないでいる。

佐々木加奈子展「Wanderlust」

art cocoon
2005年4月22日(金)-5月15日(日)

著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/


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