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自由な植物たちの肖像画
PHOTO&TEXT 石山さやか
秀友画廊で去年から行われている「静物画」がテーマのシリーズ展、4回目。
これまで鉛筆画や日本画の作家をとりあげてきたが、今回のジャンルは「写真」。
金子親一によるエアープランツという植物の静物写真だ。
エアープランツは空気中の水分を吸収し土を必要としない、アメリカ大陸原産の植物。
わずかに根のようなものはあるが岩や木にしがみつく為のもので、その辺に転がして時々霧吹きで水をかけてやるだけでも十分育つ。
そんなエアープランツたちが写真のなかで寝っ転がったりたてかけられたり、渦を巻いたり伸びきったり。
乾いた空気の感じられそうな作品もあれば、他のオブジェと組み合わされた緊張感のある作品もある。画面全体に葉を広げた大胆な構図のもの、暗い画面に白くモチーフが浮かぶ繊細なイメージのもの、写真一枚一枚の雰囲気にはずいぶんと幅がある。
すべての写真に共通しているのは、モチーフが「ただそこにいる」ということか。植物ならではのみずみずしさをひけらかすわけでもなく、さりとて消え入りそうにひっそり佇むわけでもなく。
写真というとなにかしらのメッセージを発しているものが大半だが、この展示の写真たちはあまり声高な主張はしたがらないようだ。 |
金子親一は化粧品など商品のブツ撮りを専門とする商業写真家。商業用ではない自分の作品について、「形容詞を発しない写真」にしたかったという。
「普段は『高級そう』とか『おいしそう』とか、商品にイメージを与える仕事をしている。プライベートでは、通りかかった僕が『もともとある世界』をパシャッと撮ったような作品をつくりたかった」。
額の中のエアープランツたちは、それぞれの世界の中にしっくりおさまって、それぞれにのんびりと存在している。しかし一方で、「いつまた動くかわからないよ」といった飄々とした印象も受ける。
作者も、エアープランツのそんなふわふわした自由なところに惹かれたのではないだろうか。
ちなみに、展示会場の一角では本物のエアープランツも何種類か売られていた。
育てやすさもあり、わたしもついつい一株買ってしまった。野菜でも買うようにして
持ち帰ったこのエアープランツ、いまはまだころんと机の上に転がっている。
さて、わたしはこの子にどんな世界を用意してあげようか。 |
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