top\reviews[hermit(ハーミット)/愛知]
hermit(ハーミット)


《a Braun》加藤章成
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《小説》高田映介
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《セルフポートレイト》
多田友充
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《最後の居場所は君のもの》多田友充

hermit(ハーミット)
TEXT 萬翔子

 愛知県立芸術大学の学生食堂の2階には、エントランスホールと、個室が二つの小さな展示スペースがある。もともと展示用ではなく、物置きだった通路や空き部屋を、学生たちが自主的に改修して運営し始めたオルタナティヴ・スペースだ。「学食2F」という名のこのスペースで、2005年4月11日から17日間、企画展示『hermit(ハーミット)』が行われた。出展作家は、愛知県立芸術大学大学院油画専攻に在籍中の映像作家、加藤章成、同大学の芸術学専攻に在籍し、小説家としても活動している高田映介、名古屋造形芸術大学大学院卒業で、作家活動を続ける多田友充の3人である。
 一つ目の部屋には加藤章成の映像作品が。《a Braun》は、真っ白い画面に突如染みが浮かび上がるようにして始まる。ピンク、モスグリーン、バイオレットブルー・・・鮮やかな色彩の斑点が時に点滅し、またスライドするように移動し展開していく。顕微鏡で見る植物の細胞のような、あるいは層を成すバスオイルのような染み。網膜の表面で色が戯れているのがわかる。陰影や立体感の省かれた、プリミティブな視覚は、脳をよぎる記憶や夢の画像を思い起こさせる。胎児の時に見ていたのは、ひょっとしたらこんな光景だったのかもしれない。
 多田友充の作品《最後の居場所は君のもの》は、二つ目の部屋の壁に直接描かれたウォールペインティングだ。部屋に入ると、鑑賞者の三方に星降る丘が広がる。あるいはそれは雲上の楽園かもしれない。丘はどこまでも続き、カラフルな家々が軒を列ねている。しかし、少しだけ注意深く眼をこらせば、なぜか丘の住人たちが、家の中で一斉に縊死を遂げているを発見してしまうことだろう。激しいストロークで滴ったペンキが、やけに不吉に見えてくる。最後の居場所、楽園の理想像にはどうやら憂慮すべき自体が進行しているようだ。
 色彩とイメージの視覚世界を味わった旅人が、エントランスに帰ってソファーに腰を下ろすと飛び込んでくるのが、白黒のタイポクラフィーである。テキストを目で追っていくと、「酒に酔っての帰り・・・」そこにはとある酔いどれ男の日常が淡々と綴られていた。壁にこつ然と設置されたこのパネルこそが高田映介の作品、《小説》だ。後悔と改心としらけをくり返すその日常は、自分自身を顧みているよう。私たちが日々向き合っていかなければならないのは、決して極彩色の楽園ではなく、単調な試行をくり返す自我である、とパネルは訴えているようだ。
 ハーミット、それは煩雑な世界に背を向けながら思惟にふける隠者のことだ。訪れた人々は、果たして隠者のように、イメージと思索の高度から、距離を置いた日常の姿を垣間見ることが出来たのだろうか。

hermit(ハーミット)

愛知県立芸術大学 学生会館2階「学食2F」
2005年4月11日(月)〜4月28日(木)

著者プロフィールや、近況など。

萬翔子(よろずしょうこ)

1983年福井県生まれ
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻に在籍中

 

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