"MONTSE"oil n canvas 2005年制作 500×727mm
|
絵具は塗らない、絵具を削るのです
初めて山下律子の作品を見たときの衝撃は、忘れられない。
そもそも作品を知らないで、某雑誌に紹介記事を書く(注/よくあることです)になり、プレスリリースを読んだときのドキドキ感。
そして、実際の作品を見たときのスゲーッ!と声に出してしまったくらいの感嘆。
美術史をひもといても分かるように、「技法」というのは作家にとって個性の見せ場であろう。
今にはじまったことではないが、「平面絵画」に対しては「行き詰まり」が指摘されている。“塗り”や“筆致”だけではもはや「新しくない」。
山下の作品は、白などの油絵具を下地として厚く塗ったキャンバスを、ニードル(針)で対象を削る。
その後、色のある絵具を流し込み、ふき取る、という、聞いただけでも大変そうな作り方をしている。
しかも内容は山下自身の「日記」だという。
描かれているのは、宇宙人のような性別・年齢不明の人類(と思う)による出来事が、実に細かく描写されている。
本当は他人の家で食事をしていたり、書道の練習をしているというのに。
「独特なもの」として見えてしまう内容が、山下の絵に「緊張感」を作り出している。
他の手法やもっとくだけた画風やモチーフでは、こんな感じには見えないだろう。
今回、銀座のギャラリー覚とギャラリー本城の2ヶ所で同時開催。
この技法を始めた頃の作品を展示していたギャラリー本城に比べ、山下が去年秋にも個展を開催したギャラリー覚には、近作・新作を中心に展示されていた。
展示風景写真を見れば分かるように、実に秋からこの会期までに作られた作品の、実に多いこと!画像ではわからない、「本物」の持つ「凄み」を、是非あなたにも見ていただきたい。
TEXT 藤田千彩
|