ドアを開けると床はじゅうたんに覆われ、靴を脱ぐようになっている。
まるで家のような、くつろぎモード。
それが田中功起の世界のはじまりだったとは。
GALLERY CAPTIONは、二つの展示部屋から成り立っている。
手前にある小さい部屋では、モニターが1台置いてあり、
奥にある広い部屋には、大小のモニターが5台置いてある。
暗い夜の町。映っているのは、町の片隅でうごめいている「もの」である。
たとえば、旗。
たとえば、ビニール袋。
風にさらされたり、車のライトが照らされたり、
そうやって微妙に動くものをカメラはとらえている。
向きを違えたモニターに映し出されている「もの」はそれぞれ異なり、
ビデオの長さもそれぞれ異なる。
ただひとつルールがあるならば、
最初というか最後に「すべての夜のすべてについて」の字幕が入る。
町を歩いていると、ふと見上げたり目を見やったりする「もの」がある。
誰も気づかないごみや、町に当たり前にあるようなモニュメントだったり。
そんなときの気持ちを思い出しながら、いくつもの画面を見入る。
しかし、実際の私はじゅうたんの上に座って、モニターを眺めているにすぎない。
夜は誰にでもやってくるが、この作品を見ているのは昼間だったりする。
なにも起こらない。
ただうごめいている「もの」の記録ないし記憶。
気がつくと、田中功起の世界へトリップしていた。
TEXT 藤田千彩
田中功起展−すべての夜のすべてについて
TANAKA Koki exhibition"all about all the night"
2004年10月30日(土)〜12月11日(土)
GALLERY
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