濱田樹里(於 コバヤシ画廊)と
瀧田亜子(於 なびす画廊)
この2人の作品は後になっても気になっていた。対照的に思えたからかもしれない。
濱田の作品は、階段を下りて部屋に入った途端圧倒されるようだった。赤と黒が目立つ巨大な絵画である。花をイメージして描いているように思える。具象絵画のようでもあり抽象作品とも思える。具象抽象はどうでもいいことだが、“躍動感”とか“迫力”とか“生き生きした様子”が読み取れる。タイトルは《地の記憶》(2011)。画廊内の2面に展示されていたが一つの作品であろう。大きさ200×1680cm。岩絵具を使って描かれている。見事な勢いのある作品だった。小作品も別室に展示されていた。同様に感じられる。これが濱田の持ち味なんだろうと感心しながら見た。
一方瀧田の作品は、大きな絵画が4点展示されていた。どれも一見地味な抽象作品である。しかし色合いが素晴らしい。落ち着いた何とも言えない渋みが伝わる。最近は抽象絵画を見ることが比較的少なくなったが、抽象の典型のように思えた。書画用の画仙紙に顔料で描かれている。瀧田のコメントによると
「海の色や匂い。波の高さや形。風の強さや音。日々出会うものの感触を紙の中に物の手ざわりを残して、とどめたい、と思い作品にむかっている」と。
そういえば海そのものをイメージできる作品もあった。作者自身が海に漂っているのかもしれない。落ち着いた惹かれる絵画だった。
後になって思うが、濱田の作品は具象絵画なのに抽象的に思えるし、瀧田は抽象絵画なのにコメントを見ると海を描いているようだ。まるで逆のように思える2作品に巡り合えた面白さを改めて感じた。濱田の作品が赤と黒を使った強い色彩と大胆な構図が感じられるのに対して瀧田の作品はグレーとかブラウンなどを使って落ち着いた色彩が伝わりこれも対照的。濱田の作品は見た途端圧倒されるのに対して瀧田の作品はじんわりした渋みに取り囲まれる。これも対照的である。両者とも異なった魅力がある。こんな感じを味わえたのは暑い中を歩いた褒美だとつくづく思った。