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シオイリズム

都会で見つけた夏の蜃気楼
小瀬村真美・長塚秀人・諸橋明香

TEXT 塩入敏治


群馬県立館林美術館では「夏の蜃気楼」展が開催されていましたが、その多くは日頃東京で眼にしてきた作家たちでした。
会期中同時に開催された長塚秀人・諸橋明香の個展と、まだ記憶に新しい小瀬村真美の個展を思いだしながらの感想です。


四季草花図ー春秋冬ー 映像インスタレーション 2005

小瀬村真美@群馬県立館林美術館【夏の蜃気楼展】

6月25日(土)〜8月31(水)

のどかな田園に建つ現代建築の美術館。そこで企画された展覧会には、小瀬村真美、長塚秀人、諸橋明香など、見慣れた作家の作品が発表されるとあって、見逃すことができない。
小瀬村さんは、「四季草花図ー春秋冬」の映像インスタレーションが、正面と両脇の壁面に投影される大がかりな作品。
個々に季節感を映しだしたもので、時間とともにうつり変わる表情の変化に、言い知れぬ情趣を感じた。



ICDBRSTP C-Print 26×39cm 2005


長塚秀人@ヴァイスフェルト/レントゲンヴェルケ
7月9日(土)〜8月9日(火)

館林美術館の「夏の蜃気楼」展でも作品を発表。どちらも自然を写した風景写真のように見えるのだが、風景写真とひと言ですまされない何かが気になる。モチーフは、渓谷と草原、それに海浜の3種類。風景の特定部分をフォーカスするかのような超リアルな光景と、そこから広がる肉眼の世界。それによるアンビヴァレンスな感覚が、被写体の存在を架空のもののように感じさせる。匿名的といえる風景に不思議な魅力。



フタバ画廊(個展)でのインスタレーション写真

諸橋明香@フタバ画廊
8月2日(火)〜8月7日(日)

館林美術館の「夏の蜃気楼」展で観たのは、プラスチックの容器と循環する水の壮大なインスタレーション。生きた芝生とホースを伝って流れる水の動きは、のどかな田園風景を連想させる。
同様のインスタレーションも都心での発表は、芝生が光の点滅に変わり、またカラフルなプラスチックが喧騒で、人工的都市での生命活動を象徴するかのよう。どちらも生活に密着したモノのイメージと無限の循環から、生動を感じさせる新鮮な印象である。


著者プロフィールや、近況など。

塩入敏治(しおいりとしはる)

現代美術コレクター(コレクター歴25年)
独立キュレーター(キュレーション多数)
GalleryReviewの発行
現代アート大好き人間



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