解剖「おおがきビエンナーレ2010」
第3回「温故地新」レポート(後編)
9月22日-26日、岐阜県大垣市で「岐阜おおがきビエンナーレ2010」が行われた。第2回に引き続き、期間中に披露された作品や企画をレポートする。
開催期間前半のハイライトは9月23日(木・祝)夕方に行われた「大垣まちなか舞台」だ。これは、大垣駅南の車道をその時間帯だけ歩行者天国にし、道路上に舞台を設営、そこでパフォーマンスやライヴ、ファッションショーなどを展開するというもの。「スーパー・ミラクル・アーティスティック・イブニングタイム!」と称したこの企画は、普段は静かな商店街を突如として2時間だけ非日常の表現空間に変貌させた。
プ ログラムは、クロマティック・ハーモニカ演奏のユメグミ、ハイチ伝統のドラム演奏とダンスで魅せたオン・ザ・マウンテン、大垣をイメージした舞踏パフォー マンスの女性3人組 花嵐、”クイア”をテーマとしたIAMAS学生企画パフォーマンス ナラゴニヤ ナラゴニヤ、そして大垣発のアパレルブランドGRAMDYによるファッションショーが行われた。
路上に突如出現した舞台上で繰り広げられた「花嵐」の舞踏。 |
|
|
なにげなく通りかかった家族連れが、日常からは異質なパフォーマンスに圧倒される様子があちこちで見られた。 |
9月25日(土)には、同市内のスイトピアセンターコスモドーム(プラネタリウム)でOOPS! - Open Ogaki Planetarium Session」が行われた。
プラネタリウム施設とコラボレーションした映像・音楽中心のライブパフォーマンスで、非常に先進的な企画となっていた。三澤太智と栗山絵吏は360度のドームスクリーンというプラネタリウム特有の空間を活用した映像作品を上映。Craftwifeは満点の星空の中でiPhoneを用いた演奏と朗読を組み合わせたパフォーマンス、
鈴木由信はリアルタイムで映像を生成するインスタレーションを行った。トウマシノブはシーケンスパターン、kazuomi eshimaは生のギターの音色をリアルタイムで加工、構築し、構築し、投影される星空とシンクロさせた音響空間をライブ演奏によって創りだした。特に Craftwifeとkazuomi eshimaはプラネタリウムの幻想的な空間を最大限に活用した、ここでしかできない秀逸なパフォーマンスであった。
|
|
kazuomi eshimaの演奏風景。演奏中、投影された満天の夜空が次第に白み始め、クライマックスでは目の前に夜明けの街が広がる。 |
大垣商店街の古ぼけたビル一棟を丸ごと展示空間としたのは「IAMAS TELEVISION」だ。IAMAS CGIコースが主催するiamasTVプロジェクトによる「大垣の街と人」をモチーフとした映像作品が上映された。
以上2点を含む全6点の作品が上映されていたが、場所性への意識が強く見られ、自分たちが住む街から生まれる芸術表現を突き詰めようとしているのを感じた。展示場所となったビルも非常に味わい深く、総合的に大垣という街の奥行きを感じる展示であった。
今回のおおがきビエンナーレでは、空き店舗や空きビルをギャラリーに、道路を舞台に、プラネタリウムをライブハウスに、といったように既存の場所を異質なものに作り替えて作品を出現させた。これまで、IAMASはどうやって街との関係性を深めていくかをビエンナーレを通じて試行錯誤してきたが、観客を自分たちのフィールドに”招き入れる”形が取れるようになってきたのではないかと感じた。古き良き物と先進的な芸術表現が同居する大垣の街。IAMASとおおがきビエンナーレの挑戦が、街の力を生み出す実験場として今後も発展していくことを期待する。