|
Q.日本人の作家はどのように応募すればよいのでしょうか。
A.このプログラムは公募制ではありません。わたしたちは、オーストラリア、ノルウェイ、スウェーデンなど多くの国のアート・カウンシルと提携を結んでいます。その機関で選定されたアーティストの中から、我々を含む審査員が、ベタニエンにふさわしいアーティストを選定します。残念ながら、日本とはこの提携を結んでいません。しかし、常時、作品ファイルなどは受け付けています。審査を通った作家には(レジデンスの)推薦状を書きます。それを通じて、何らかの奨学金を得ることができた場合にのみ、このプログラムに参加が可能です。これまでに、ポーラ美術振興財団と文化庁の奨学生を受け入れました。現在、2009年までスタジオに空きがない状態です。
Q.プログラムの具体的な内容を教えてください。
A. 全部で17のスタジオがあり、アーティストは6ヶ月〜12ヶ月間滞在します。年間2回のオープンスタジオと1回の個展を行なうことができ、その間、キュレーターやギャラリストによるスタジオ訪問が頻繁にあります。また、木工、金工、印刷の工房、映像編集機材もあり、技術者も常駐しています。
Q.アーティストがレジデンス・プログラムに参加するメリットは何ですか?
A.私はAIRを、芸術系の学校で学び体験することとは異なる重要な期間と考えています。ギャラリーや美術館とも全く違うシステムです。彼らは一年間、資金面での心配もなく、市場を気にすることもなく、純粋に自身の制作に集中できます。自分の国では会うことのできない多くの人々とコミュニケーションが取れますし、作品について様々な反応を得ることができます。スタジオ訪問では、ここ数年、新しいアーティストを探しにくる若いキュレーターが多く訪れます。ここでのレジデンス後、彼らは多くの場所で作品発表の機会を得ることもできます。他国でのグループ展への参加や、個展の開催、最近では光州、イスタンブール、シンガポールビエンナーレなど大型国際展の参加依頼もありました。また、工房には様々な機材がそろっており、技術者もいるので新しい方向性を模索することも可能です。レジデンス・アーティスト同士の交流も盛んで、彼らはレジデンスが終った後も、情報交換やコラボレーションを行うなど良い関係を保っているようです。遠い国からベルリンへ来るアーティストたちは、異文化を通して自身のアイデアを広げることができるのが、最も大きなメリットだと思います。
Q.もちろんプログラムには良い点もたくさんありますが、不慣れな土地で制作をすることは時に困難も伴いますよね?
A.そうですね。知らない国で知らない言葉で生活するのは容易ではないし、材料一つ揃えるのにも時間がかかります。また、協調性、責任感、状況にコミットメントしていく能力なども必要とされます。しかし、だからといって制作が上手くいかなかったと言ったアーティストは一人もいません。もちろん人にもよりますが、三ヶ月もすれば慣れるようです。大変な面もある分、充実した一年になっているはずです。
Q.あなた自身は、アーティストがこのプログラムを経てどうなることを望んでいるのでしょう?有名になることでしょうか?
A.もちろんそうですし、作品を作り続けてほしいです。でも、市場に左右されないでほしいと願っています。アーティストのキャリアにおいて、やはりある程度の波はあると思います―今は実力が認められ安定していても、やがて下火になったり、また回復したり…。もちろん、やればやるだけ状況は良くなる場合もあります。彼らには可能性があります。しかし現在は、たとえ大きな国際展に参加して名声を得ても、満足した収入を得ることができないという状況が多々起こっています。画廊がつけば、もう少し自由もあって資金的にも楽にはなりますが、皆それが可能かといえば、そうではないのが現状です。
Q.ベルリンの財政状況など、資金面での問題はありませんか?
A. 州の財政状況は厳しくなってきています。ベルリンには本当に沢山の文化組織がありますし。美術館など大きな施設を持つところは、きっと充分な額を得ていないと思います。ほとんどの文化組織は、プロジェクトを行うために助成金の申請をし、財団からの援助を受けています。私たちもその援助がなければ、AIR以外の展覧会ができません。しかし、私たちは恵まれた状況にあると思います。施設もそれほど大きくありませんし、パートナーや企業スポンサー、パトロンもついています。プログラムにかかる費用は、企業スポンサーと各国の提携機関が受け持っています。
|
|
|
バレリア・シュルテ=フィッシェディックさん
|
|
スタジオが並ぶ
|
|
開放感のあるスタジオ
|
|
カナダから来ているアーティストのHadley
+ Maxwell「レジデンス終了後も、しばらくベルリンで活動するつもり。」
|
|
展覧会の臨時スタッフのクリスチャン・シンドラーさん。去年、大学で社会学を専攻しながらインターンとして働き、今回この職を得た。
|
|
オフィスは個室でも、ドアを開放して。
|
|